南フランスの鷲の巣村の中でも「トゥーレット・シュル・ルー」は、スミレ村として知られる小さな可愛らしい村です。南仏は初夏の花が咲き乱れる頃がいちばん美しいといわれていますが、11月〜3月のスミレの花が咲く頃に訪れるのが、おすすめです。

今回は、南フランスに数多く存在する中世の面影を色濃く残す村の中でもスミレ村として知られる、可愛らしい村を紹介します。




トゥーレット・シュル・ルーについて
Tourrettes-sur-Loup
(トゥーレット・シュル・ルー)
フランス
プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域
アルプ=マリティーム県
コートダジュールの玄関口「ニース」からバスを乗り継いで1時間半、国際映画祭で有名な「カンヌ」からバスを乗り継いで2時間半の場所にあります。
バスを乗り継ぐといっても、その乗り継ぎのバスが一日に数本しか通りません。
ドライブをしようと決めたのは、このアクセスの悪い村を訪れるためでもありました。
前回紹介した村「サンポール・ド・ヴァンス」からも近いです。
ですが、古くからひっそりと存在する美しい村というのは、不便な場所にあるものなのかもしれません。
この村も高い岩山の上に建物が密集して作られた村ですが、エズ村のような「鷲の巣村」ではないようです。
こちらは、「トゥーレット・シュル・ルー」のイメージイラストです。
スミレグッズを販売しているお店のカードに描かれていたので、写真を撮って載せてみました。
こうしてみると、崖の上の街、スペインの「ロンダ」や「クエンカ」の雰囲気にも似ているような気がします。
それでは、いよいよ村に向かいます。
陶器職人お手製の村の案内板が、温もりを感じます。
駐車場から降りてすぐの、村の入り口付近です。
南フランスらしい色合いの建物や窓、カフェの雰囲気が、まるでニースを小さくしたようです。
モノクロ写真が似合いそうな村の時計塔が素敵ですね。
あまりにも可愛らしいので、アップでも撮ってみました。
ノスタルジックな佇まいの教会も、思わず足を止めて眺めてしまいます。
石造りの三角の塔が美しいです。
トゥーレット・シュル・ルーの村の中
この村も、足を一歩一歩進めるたびに、ワクワク感が増していきます。
村を歩いているのは私たちだけで、まるでタイムスリップしたような感覚に陥ったのを、今でもよく覚えています。
そして、人が全く歩いていないため、「サンポール・ド・ヴァンス」よりも写真が撮り放題でした。
この頃はブログもInstagramもTwitterもやっていなかったので、投稿を意識しての写真撮影よりも五感を大切にしようとしていたのですが、やはり中世の面影を残す美しい村は、どうしても写真をたくさん撮ってしまいます。
写真を撮るのって、けっこう時間を取られるんですよね。
小さな村とはいえ、これらはしっかり確保したいので、1時間で回れる村でも私たちにはその倍くらいの時間が必要です。
ポイント
- じっくり村の雰囲気を楽しむ時間
- 写真を撮る時間
- カフェやランチをする時間
黄色い壁の建物と石造りの建物が可愛らしい雰囲気です。
このアーチと奥行き感が好奇心を掻き立てられますね。
アーチを抜けると、さらに可愛らしい建物や路地が現れます。
中世の頃からそのまま残されたような石畳の道、石造りの家、可愛らしい窓、まるで「おとぎ話」に出てきそうな村でした。
近くにあった手洗い場も、アンティーク感があって素敵です。



古いドア。
マイホームを建てることになったら、こんなドアを取り付けたいなぁ。
赤い窓が可愛らしいですね。
窓をアップで撮ってみました。
近くに、素敵な石造りの家と看板がありました。
真っ赤なバラのアレンジメント。
この村の、甘すぎない素朴な可愛らしさに惹かれます。
白い南仏らしい窓は、我が家のインテリアに飾りとして取り入れたいと思いました。
建物の間からみえる山の景色が気になり、近づいていきました。
すると、なんと・・・。
奥に真っ青な地中海がみえました!
村にポツンと佇む、素朴で小さな教会。
こちらは、その教会の内部です。
トゥーレット・シュル・ルーの静かな路地
鷲の巣村の魅力といったら、やっぱり迷路のような細い石畳の路地ではないでしょうか。
それにしても、この村は本当に誰も歩いておらず、静かすぎて少し寂しいような気もしました。






人が誰も歩いていないので、このように写真が取り放題でした。
なんだか、村を独り占めしているような贅沢な気分です。
ストリートプレートもいい感じ。
ところで、洗濯物のあるヨーロッパの風景って、どうしてこんなにも絵になるのでしょうね。
村からの景色
村の丘の上まで辿りつきました。
この村は、「エズ」や「サンポール・ド・ヴァンス」ほど、坂道や階段がキツくないです。
黄色のアーチを抜けるとなんと!






来た道を振り返るとこんな感じで、どこを切り取っても絵になります。
岩山に建つ家と山景色も素晴らしかったです。
遠景、実際はもっと美しいのですが、安いコンデジなのでこれが限界です。。。
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※ その後(2017年10月)購入しました。
村で出会った日本人マダム
村からの景色を楽しんだ後は、ひきつづき村の中を散策。
てくてくと歩いていると、何やら人の声が聞こえてきました。
気になって声が聞こえるほうに近づくと、とても素敵な建物が!
この村はとても静かだったので、ふと声が聞こえるほうに目を向けると、ひとりのアジア人女性と目が合いました。
その女性は、数人の村人とフランス語でお話をしていました。
そして、私たちに向かって、にこやかに声をかけてきました。



日本人の方でした。






日本人遭遇率が最も低い(というより、いないであろう)と思われた村だけにとても驚きました。
そして、何だか嬉しい懐かしい気持ちになりました。
フランスに来てからというもの、ダンナさん以外の人と日本語で話していなかったのもあったと思います。
69歳という年齢にとても驚かされましたが、フランクなラテン気質で明るく若々しいマダムでした。
しかも、この村へは一人旅で、ニースからバスを乗り継いで来たそうです。
スミレが大好きで、以前からこの村を訪れたいと思っていたそうです。
そして、渡仏は成田からニースまで南周りのドバイ経由(エコノミー)という事に更に驚かされました!
体力年齢はむしろ私たちより若いのではないかと思ってしまうほどの行動力です。
ヨーロッパは遠いし、60歳過ぎたらビジネスクラスじゃないと行けないな、なんて思っていましたが、心身ともに健康であれば大丈夫なんだと希望が持てました。
マダムは、このように語っていました。



マダムとはこの日初めて会ったとは思えないほど打ち解け、ガールズ(!?)トークで大盛り上がりでした。
旅スタイルや好みなどが合うというのも大きかったと思います。
また、フランスが大好きでフランス旅行経験が豊富なため、興味深い話をたくさん聞けたのも嬉しかったです。
マダムは、私にこうも言いました。






とにかく、「あなたラッキーよ!」と言われたことが何だか嬉しくて、初めての海外旅行先が南フランスで幸せなんだな、と思うことにしました。笑
そんな流れで、帰りのニースまでの道中もご一緒しましょうという事になりました。
実はマダム、駐車場から私たちが村へ向かうのを発見し、「日本人だ!」と思ったそうです。そして、帰りは相乗りさせてもらおうと思っていたそうです。笑
あと、私たち夫婦が一緒の写真も何枚か撮ってくださいました。
二人だとなかなか一緒に撮れないので、とてもありがたかったです。
幸いにも東京在住との事で、今でもやりとりが続いております。
何度かマダムの東京のご自宅にもお邪魔させていただきました。
旅から繋がったご縁、これからも大切にしていきたいと思います。
村の人たちも、フランス語しか通じませんでしたが親切で人懐っこくて、東京ではなかなか感じづらい人の温かさにふれる事ができました。
スミレづくしのお店
マダムと私たちは、そのままおしゃべりに華を咲かせながらスミレのお店を訪れました。
この村にはスミレのお店が二つあります。
ひとつは村の駐車場からすぐ近くの場所にありますが、残念ながら休業日でした。
スミレ村を訪れたいと思ったきっかけのひとつに、このスミレのお店がありました。
ラベンターのお店はよく見かけますが、スミレのお店ってなかなか出会えないんですよね。



洋服やインテリアのベースはモノトーンですが、アクセントとして紫色を取り入れるのが好きなのです。
紫色もさまざまですが、スミレ色の濃い深い色に惹きつけられます。
紫、10代、20代の頃は全く興味のなかった色なんですけどね。
訪れたお店
Engrenage la Tourrettane
(読み方がわかりませんでした…)
[blogcard url=”https://www.tripadvisor.com/LocationPhotoDirectLink-g187243-d10185789-i184906578-Violettes_de_Tourrettes-Tourrettes_sur_Loup_Alpes_Maritimes_Provence_Al.html”]
こちらはマダムに教えていただいたお店です。
目立たない小さなお店なので、マダムと出会っていなかったら素通りしていたかもしれません。
そんな小さな村の中の小さなお店ですが、あの有名なフランス映画「アメリ」の主人公役 オドレイ・トトゥ が愛用している香水を扱っていたのです!



香水は既にサンポール・ド・ヴァンスの「フラゴナール」で購入済みだったので買いませんでしたが、お土産用に石鹸やキャンディーをたくさん購入したら、店主がミニサイズの香水をプレゼントしてくれました。
アップで撮ってしまったので大きさが分かりづらいかもしれませんが、とても小さくて可愛らしい香水です。



もったいなくてあまり使えていませんが、ふんわりとスミレの優しい香りがします。
あとは、スミレのサシェを購入しました。
こちらも香りに癒されます^^
商品のラベルやラッピングのデザインがエレガントで美しいので、自分へのプレゼントにも親しい人へのお土産にも大変おススメです。
友人が、封を開ける前から喜んでくれました!
中身はスミレのキャンディー。
スミレのキャンディーは自分用にも買いましたが、けっこう美味しかったです。
キャンディーが入っている器は、マダムが自ら絵付けしたものです。
マダムは東京のご自宅で陶器の絵付け教室の講師をしていらっしゃるのですが、なんと、マダムの作品もこのお店で扱っているのです。
渡仏は旅行だけではなく、ビジネスも目的だったようです。
訪れるのを夢見た村で自分の作品が店頭に並ぶなんて素敵ですね。
マダムの作品は、帰国して再会した時にいただいたプレゼントがあるので、改めて記事で紹介したいと思います。
オンラインショップの案内広告もお洒落です。
休みだったお店
La Tanière Du Loup
(ラ・タニエール・デュ・ルー)
村の入り口付近にあるお店で、雑誌やテレビでも紹介されていたので訪れるのを楽しみにしていたのですが、閉まっていて残念です。
こちらのお店で人気なのは、スミレのキャンディーとスミレのリキュールだそうです。
キャンディーはシャンパンに入れたり、リキュールは白ワインに混ぜたりすると美味しいそうです。
スミレ博物館
La Bastide aux Violettes
(ラ・バスティド・オー・ヴィオレット)
買い物を終えたら、次はスミレ博物館へ向かいます。
ベージュ色の建物が博物館です。
近くには、オリーブの木もありました。
それでは、中に入っていきましょう。
ここは村のはずれにあり、スミレの栽培もしています。
そして、スミレのことはなんでも教えてくれるそう。
無料トイレがフランスにしては珍しくとても綺麗だったので、訪れた際には利用される事をオススメします。
スミレ色の館内にテンションが上がります!
展示室の様子はこちらです。



展示品をゆっくり鑑賞したあとは、実際にスミレを栽培している場所を見学しました。
向かう途中も、スミレ色でいっぱい。
植木鉢の色までスミレ色です。笑
スミレの花が咲くのは11月〜3月。
とはいっても、私たちが訪れた3月上旬は枯れている部分が多かったです。
このように温室で栽培されていました。
地面に植えるのではなく上から吊って栽培されています。
このほうが地面に植えるより4倍も収穫の効率がいいとのこと。
収穫はひとつひとつ手作業で行われます。
ブーケを作るなら25個の花が必要。
摘んだスミレに葉を添えてクルクルとまとめて出来上がりです。
このスミレは深く鮮やかな色で香りも強いため、観賞用としてだけではなく香水の原料としても使われています。
この村で収穫されたスミレは香水の町グラースに運ばれます。
スミレは寒さには強いけれど、湿気に弱い花。
この村は標高450メートルにあるため湿気が少なく、スミレの栽培にとても適しているのだそうです。
休憩したカフェ
Café du Midi
[blogcard url=”https://www.tripadvisor.fr/Restaurant_Review-g187243-d4014919-Reviews-Le_Midi-Tourrettes_sur_Loup_Alpes_Maritimes_Provence_Alpes_Cote_d_Azur.html”]
村を思う存分楽しんだ後は、こちらのお洒落なカフェレストランで休憩をとりました。
古くからあるお店のようで、ここもマダムに教えていただきました。
私とダンナさんはコーヒーを。
マダムはなぜか、この寒いなかアイスクリームをオーダーしていました。笑
スペインもそうでしたが、やっぱりヨーロッパはコーヒーが美味しいですね。
そして、こちらのお店のスタッフも陽気で笑顔が素敵でした。
スミレ祭り
この旅ではスケジュールが合いませんでしたが、この村で毎年2月に開催されている「スミレ祭」では、民族衣装を身につけたグループが集まり、スミレやミモザなどで飾られた山車が村を練り歩くそうです。
静かな村も、祭りの期間中は多くの人が訪れるそうです。
村中がスミレを中心とした花々で飾られるスミレ祭り、その時期にもいつか訪れてみたいものです。
まとめ
南フランスの村々は、初夏の花が咲き乱れる頃がいちばん美しいといわれていますが、このトゥーレット・シュル・ルーは、11月〜3月のスミレの花が咲く頃に訪れるのをおススメします。
調べてみたところ、この村のスミレはVictoria(ヴィクトリア)という品種で、日本の野に咲いているような小さなスミレとは別物で、ニオイスミレというもの。
ニオイスミレの花ことば
「高尚」「秘密の愛」「奥ゆかしい」「控えた美しさ」
このトゥーレット・シュル・ルーという村が、コートダジュールの山にひっそりと奥ゆかしく存在する美しい村なので、花ことばのイメージそのものですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次は、「ヴァンス」の「マティスの礼拝堂」です。
À bientôt! (またね!)

